Hanako Miyamoto
Asbestos
- A gift from my father -
It's not possible to get what you want.
You can't always have the relationships you wanted.
But even so, I still deeply care for you.
夜眠るために、部屋の電気を消して真っ暗にします。
そうすると、時計の刻む音が急に気になり始めます。
父は、16 才から工場で働き始めました。
最初に勤めた工場はアスベストを含んだ製品の工場でした。
アスベストは 20 ~ 50 年の体内潜伏期間があるとされています。
父は、70 才の現在でも工場で働いています。
昔から父は死をとても恐れているように見えました。
調べるうちに、5 才から工場で、沢山の時間を過ごしてきた自分も
一定量以上のアスベストを吸っているということに気付かされました。
「静かなる時限爆弾」と呼ばれる、アスベストが体内に在ると
いう恐怖を感じるようになって初めて、父の死に怯えている心が
理解できました。
私は、夜眠る時、全ての電気を消します。
途端に、時計の音が気になり始めます。
アスベストという爆弾を認識して、抱え始めてからその時間は私に
とって不快なものです。この不快さを、父も抱えているのでしょう。
父の好きなエメラルドグリーン、工場では安心、安全を意味した色です。
爆弾の表面に、アスベストを顕微鏡で見た図の絵を、そんな特別な色の
エメラルドグリーンで丹念に描きました。
父と私の共有している不安や怯え、緊張を作品に込めました。
《Non melon - this is asbestos bomb -》
2010年 インスタレーション
Mountain - a mountain of asbestos -
《Mountain - a mountain of asbestos -》
2013年 インスタレーション
Asbestos- a gift from my father - を鑑賞した沢山の方からタイルのようだという感想を頂きました。
タイル
と聞いて、 真っ先に私が想像したのは、祖父の家のタイルです。
懐かしく、愛しい想いが呼び起されます。
ふと実家の貸工場に廃棄出来ずに、残っているアスベスト製品の山を
思い出す時の感覚が、それ近いことに気付きました。
いつからか
私のアスベストへの想いは、そういったものに変化していたようです。
禍々しく、悪影響を多く与えるアスベストですが、 愛しいと思えれば愛しいのかもしれません。
廃棄出来ずに残る、アスベストの山が持つ負じゃない部分を 伝えたくて作品にしました。
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